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383スローネット―IT社会の新たなかたち

2011-07-21 (thu)|カテゴリー:

西垣先生の新作.

西垣通先生は,情報や心の捉え方で

僕が一番「ベース」を共有していると思われる先生.

 

本書は,新しい理論書というよりかは,表紙からもみてわかるように

ちょっと,エッセイ or コラム的な要素が入ったネット時代の社会批判・分析(?)の書だ.

 

「スローネット」という言葉は,キャッチーだ.

西垣先生は編集の方から,この「スローネット」についての本を書かないか?

と持ちかけられ,意欲が湧いたと書いておられる.

 

たしかに,スローネットという言葉は何か議論したくなって そそるものがある.

IT,ネットが超えた物.それは時間であり,速度だ.

実は,これは,鉄道が超えたものと同じである.

 

産業革命は,すべての時空間のトポロジーを歪めることで発展してきた.

その結果うまれたのがファスト社会だろう.

 

西垣先生はここで 我々の時間を早める,せきたてるネットをファストネットと呼び

ITの使い方はそれだけでいいのか?

と問いかける.

その対立軸としてのスローネットである.

 

三浦展がモータリゼーションによって,破壊される地方,町並みを

ファスト風土化する社会と呼んだのと相似だ.

0054 ファスト風土化する日本 « 谷口忠大HomePage (たにちゅーのHP

 

本書の多くはファストネット批判と,考察に捧げられているようにおもう.

 

さて,一方で,スローネットについての概念化,提案は十分ではないように思う.

 

文体も含めてだが,敬愛する西垣先生だが,ちょっと見切り発車が,

あったのではないか?とも思う.(失礼・・)

 

本質的に時空間を縮める事で,それまでの構造を破壊するIT.

そのITを担いだままで,スローネットなど可能なのか?

ろはす,スローフード,スローライフ.

これまで,いずれかの企てが,

暴力的な技術という力の前に,達成しなかったように思われる.

資本主義社会における技術発展と時間を短縮することについての

競争は濁流だ.

 

本書を読み終えた後だからこそ,今度お会いした時には

「スローネットとは何か?」について議論させてもらいたいように思う.

 

IT技術全盛の中で,ネットとリアル,ローカルとグローバルのバランスの中庸解を探るのは

私たちの研究室の使命でもある.

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