376「室町幕府論」
久しぶりに歴史に対する思索.
面白く読んだ.
鎌倉幕府,江戸幕府に比べて
影の薄い室町幕府.
その室町幕府に焦点を絞った,一冊.
多くの研究が後醍醐天皇による中興から
南北朝時代から義満までに焦点を当てるなかで
義満以降,特に義持の時代に焦点をあて,
室町幕府の姿を新たに描こうとする.
本書の特徴は幕府を主に財政的な側面から
分析するという点である.
幕府というものも,朝廷というものも経営する
必要があり,常に,その状況に応じて形作られる必要がある.
特に興味深いのが金融業の発達であろう.
金融を軸に冨が集まり,それが社会の仕組みに影響を
与えるという話は,近代においてはとてもよく聞く話であり.
現実,資本主義・民主主義国家のある種の根本的問題なのであるが,
それが,すでに室町幕府の時代から現れていたというのも
興味深い.
また,それが,戦乱と結びつき,戦乱が荘園からの
税収を減らし,それゆえに,借金をする必要があり
そこで金融業も盛んになったという点が面白い.
また,その際に主役になったのが神社仏閣という
ある意味でのタックスヘイブンにいた人たちだったということ.
室町幕府という500万年前の世界に,現代の政権運営と
同質のものを見つけられる感覚はまた,面白い.
ただ,本書でもやはり義満の部分というのは大きく,
やはりそこのストーリーが興味を引いた.
そして,義持によりその成功システムが完全に放棄されてしまうこと.
将軍という一人の思惑で,国家が成功したり凋落もする
不安定なシステムは怖いなとおもうのであった.
こういうのは現代社会とパラレルに,また連続的に捉えるのがおもしろい.