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353「モーセと一神教」

2011-02-22  (tue)|カテゴリー:

 

フロイト最晩年の著作

 

精神分析を構築した巨人フロイトが,自分のルーツである,ユダヤ,ユダヤ教と

その根源に位置するモーセについて様々な証拠をもとにその謎に迫る.

 

なぜ一神教が現われたのか?

モーセはどのように実在したか?

 

本書を読んで,回りくどい言い回しに,いらっと来る人もいるかもしれないが

僕はカナリ面白かった.

 

このような歴史に対する議論はフロイトの専門と一般に言われる精神分析ではない.

しかし,フロイトはそれを十分に知りながら,かなり徹底した文献調査の上で

可能な限り厳密に及び大胆に自説を展開する.

もちろん,証拠が十分に得られない,このような議論は完全に論理的にはなりえない.

故にフロイトの議論の進め方は非常に慎重だ.

しかし,慎重になるだけでは,何も引き出されないことも知っている.

故に,しばしば,大胆だ.

 

このバランス感覚と,論理展開に関するセンスが

「やっぱり,フロイトは頭いいな・・・・」

と,単純に感心させられた.

好きな過去の知の巨人なので,読んでいて,そのあたりもうれしかった.

 

また,宗教の根源に触れるわけだが,

その議論に,もう,言わずもがなで,「宗教は心理学的な産物」ということを

当然の事実のように,敷設しているように読めた.

# ユダヤ迫害期,カトリック教会に守られながらも,このような事を言ってしまえるところがすごい...

 

僕の好きな学者にはユダヤの偉人がなぜか多い.

多神教がしみこんだ日本の文化でアイデンティティを形成しながら

ユダヤ民族から発される普遍性のメッセージ,目に見えない物をモデル化する人々に共感する

自分のルーツはなんだろう?と思ったりもした.

 

目に見えない存在を大切にする,

ユダヤ教の偶像崇拝禁止は,大きな意味を持っているように思った.

 

結構おすすめします.

COMMENTS コメント

  1. shimamoto 2011-02-24 (thu)

    フロイトあんまり好きではないんですが,
    これはおもしろそうですね.
    私もユダヤとユダヤ教に興味をもってます.
    流浪の民なのに(故にかな?),ユダヤの圧倒的な知の巨人の輩出量!
    私も興味を持つ偉人の大半はユダヤ系です.

  2. たにちゅー 2011-02-25 (fri)

    ですよね.

    たしか,しまもとがユダヤ論の本
    昔紹介してくれたっけ?
    あれもよんでみたいっす

  3. shimamoto 2011-02-25 (fri)

    内田樹先生の私家版ユダヤ論ですか?
    あれはさくっと読めて面白いですよ.

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