[362]「世界征服」は可能か?
漫画や特撮でよくある,世界征服という言葉,
マンガやアニメの文献をひきながら,これを真面目に考えてみようという本.
ポップな内容のなかに,改めて考えると,いろいろ味わいがあり,
すこし考えさせてくれる本.
まず,世界征服をする立場にも大きくわけて4通りあるなど示し,
もしあなたが世界征服をするならどのタイプか,などという話になる.
世界征服を真面目にやろうとすると,
目的設定,人材の確保,資金調達と設備投資,作戦と部下の管理,また,征服後の
階級形成や後継者育成など多くの問題がある.
これらをどうするか?
本書では漫画のネタだけに収まらず,徳川家や織田家,また,ローマ帝国,モンゴル帝国などを
例に引きながら論じている.
そういう意味で,歴史に向かう方向性があり,面白い.
最後の賞での議論だが,現在,「悪の組織」を作っるとしたら,
それはどんな組織になるか?
それは,エコロジー活動団体のようになるというのが,本書の結論だ.
なんで?って思う人は読んでほしい.
ちなみに,僕の中での腑に落ちた気づきなのだが,
世界征服の意味が変わってきているのだろう.という点だ.
昔は,織田信長が天守閣から見た夜景は,彼にしか見れない,彼が居ないと存在しなかった光景だった.
そこにはイノベーションがあった.
いま,権力をもって人を支配しても,価値ある財を提供するのは大衆であるので,その中から高いものを買う
という程度のことしかない.
となれば,過去の世界征服に対応するのは,現在では,権力の座につくことではなくて
イノベーションを起こして,自分が居なければ見られなかった光景を見ることではないだろうか.
そこに至上の喜びと恍惚が生まれるのだとおもう.
本書には書いてないが,本書を読んで僕が勝手にたどり着いた結論は
「世界征服はイノベーションである.」
である.