[341]生命壱号 おそろしく単純な生命モデル
あまり郡司ペギオ先生の本は読んだことがなかった.
複雑系の構成論的研究でいえば,かなり先輩格に当たる先生だろう.
本の内容についても,記号接地問題ふれたり,オートポイエーシスの話,セル・オートマトンの
話などつらなっていく.
さて,分厚さの割には,トピックは一気通貫でございまして,
「生命壱号」と筆者の呼ぶモデルにより表現されうる生命のダイナミクスについて述べていく.
生命壱号はセル・オートマトンのようなモデルであり,ある見方をすると粘菌のモデルのように捉えられる.
粘菌の構成論的モデルは意外とイロイロございまして,これ以外に私の知る限りでも,国内だけで幾つかの
独立したモデルがあるように思う.
さて,途中から集合論,束論な話がはいってきて,なかなか読者を振り切る感じがアレなんですが,
どうも,「わかりやすく説明しよう」というノリはあまり無いように思う.
および接地点が哲学的な接地点に向かおうとしてるようで,
最終的には本書自体がちょっとわかりにくくなってしまっているようにも思えた.
また,初めから最後を通して,「タイプとトークンの両義性」という,キーワードが出続けているのだが,
これもちょっとわからなかった・・・.
複雑系,人工生命からの構成論的アプローチについて学びだし,入門書を読み終えた人が,
具体的な,そこからの研究展開の一例として,呼んでいくには,一つのガツっとした内容だと思う.
哲学と構成論の間の微妙な関係に,久しぶりに悩んだかもしれない.