通勤手当が郊外化を生み出すし,労働者の時間を奪うという話.
@tanichu谷口忠大
通勤手当てって電鉄会社に対する補助金みたいだ。従業員対するインセンティブ逆向きじゃね?近くにすんでしっかり休ませて仕事に取り組ませた方がいい。通勤手当てが遠くに住む逆のインセンティブを生んでいるのは都市関係の学者等には有名だが、一般の人にはあまり理解されてないかと、、、
と,つぶやいたら,
「なるほど!」「よくわかんない!」
両論出たので,ちょっと書いておこう.
海外では通勤手当を支払わないところが多いと聞く.
この常識を知ったのは,京都府の関係で「あいのり研究会」をやってる時だった.
日本でもあいのり=カープーリングが普及すれば,無駄な交通量を減らせるのではないかという
話だったのだが,結局,ニーズが無い という感じになった.
ニーズがあるのは,例えば高速道路を使うようなコストのかかる場合だと
3人くらいで高速道路を割り勘すると あいのり は有利になる.
通勤の場合でもおなじだ
条件F
海外(たしかドイツとか)だと,通勤手当が無いので,みんな,通勤のコストをケチろうとする.
それゆえに,
1.会社の近くに住む.
2.あいのりや自転車通勤などコストのかからない方法を模索する
ということになる.
結局これって コンパクトシティであり,CO2削減だ.
条件J
これが日本の場合だと,給与に通勤手当が上乗せされる.
そして,この通勤手当は 遠くに住めば住むほど高額になるのだ.
さて,
条件F の場合 労働者の得る賃金は 給与S とする.
これに対して,固定出費として 住宅代金H と 交通費T が引かれる
その残額をIとすると
I = S –H – T = S- (H+T)
である.
この際,H+T を最小化することが,労働者の利益を最大化させる.
多くの場合,通勤先の地価は高く,郊外に行くほど安いので, H は郊外に行くほど安くなる.
一方で Tは郊外に行くほど遠くなるので高くなる.
その均衡点で,H+Tは最小化されるのだ.
これに対して,完全に通勤手当T’ が しはらわれる条件Jだと
T=(S+T’)-H – T = S-H ただし, T’=T
となる.
よって Hを最小化すればいい.
ということは,地価が安い郊外へ向かえば向かうほど 労働者の
利益は最大化されるのだ.
住居は勤務先から遠ければ遠いほうがいい!?
実際には交通費以外に, 交通時間のコストもかかってくるので,
そのへんとおりあいながら,労働者は住居を決めるのである.
いずれにせよ,通勤手当は遠方にすませ,鉄道にのって,通勤することにたいする
インセンティブを高める.
労働者の分布は地代の安い郊外方向へバイアスされる.
さて,こういうインセンティブが実は郊外化もすすめるのだとすると,
通勤手当をやめ,それを 平均して,普通の給与に転化させたほうが
職住近接は間違いなく進であろう.
また,通勤時間が長い方に労働者をシフトさせることは
結局は労働者のプライベート時間を奪う.
実際,われわれは労働時間にどれだけパフォーマンスを出せるかは
プライベート時間にどれだけ休めているか に負うところは大きい.
結局,プライベート時間を削ることは,会社側にもネガティブに跳ね返ってくるのだ.
と,こうなってくると, 通勤手当 って 誰得?
な,話になってくる.
電車のプラットフォームで あまりに多い 通勤電車の人混みにさらされながら,
「これって,公的資金による特定業界への利益誘導のパターンに似てねぇ?」
と思って,上のようなツイートをしたのでした.
結局,通勤手当はJRなどの電鉄系の会社の収益に消えていく.
なにか資金が恒常的に流れる仕組みができてしまっているように思われる.
また,考えてみるとアレですね.郊外に一戸建てを立てるというパターンは
結局 ハウスメーカーの仕事も増やしますね.
僕も通勤手当もらって,現在は長距離通勤している部類ですが.
ダメだね.知的労働者としては,もっと「時間」を大切にすべきだよ.
また,こんな話が好きな人は下記などもよろしく
谷口忠大,高橋佑輔
モビリティマネジメントと都市構造変化についてのマルチエージェントシミュレーション
計測自動制御学会 システム・情報部門学術講演会 SSI2010, .(2010)[PDF]
たにちゅー 2011-09-17 (sta)
http://twitter.com/#!/tanichu/status/113387585870626816
これです.