4.多モードを有する自動化機械に対するユーザのモード認識過程
本研究では,多モードを有する自動化機械に対するユーザの学習過程およびモード認識過程を,モジュール型学習機構を用いてモデル化する事により,ヒューマンエラーの代表例の一つである人間のモード誤認識(mode error)の発生を予測出来る事を示した.
人間はモード認識を行う際には(1)モード遷移則についての知識と記憶,(2)ヒューマンインターフェイス上の表示,(3)操作上のダイナミクス(入出力関係)の三つを主な手掛りにしていると考えられるが,本研究では(3)に特に注目しモデリングを行った.
具体的には,ACC(Adaptive Auto Cruise)機能を有した自動車を実験題材にとりあげ,簡易ドライビングシミュレータ(図8)を用いた認知実験と,その結果に基づくシミュレーション実 験を行った.人間の運転履歴を記録し,これを用いて,人間の小脳周辺に獲得されるといわれる複数の状態予測器(複数内部モデル:Multiple internal models)をモデル化したモジュール型学習機構に学習とモード認識を行わせた.結果,全時間の内,約80%の時間で学習器のモード認識は人間のモード 認識に一致し,また,誤認識に限っては約50%の時間で人間と同様にモード誤認識を発生させた.これにより,複数内部モデルによるモード認識の表現の妥当 性が示された.
ま た,上記(1)~(3)全ての手掛りを扱う,モード認識モデルとしてTransitional Mixture of Expertsを提案した.この学習器を用いる事で,統計的学習を通じてモード遷移事象を含んだモード認識機構が学習される事は示されたが,しかし,人間 の認知実験との比較を通した検証は充分になされておらず,今後の研究を要する.
関係する論文
- 谷口忠大,椹木哲夫,堀口由貴男
“他者理解の記号過程と自動化に求められる社会知”
計測と制御, Vol.46 (12), pp. 945-950 .(2007) - 田中勇作,谷口忠大,堀口由貴男,中西弘明,椹木哲夫,
” 多モード自動化機械に対するユーザの複数内部モデルの動的構成過程に関する研究”,
第34回知能システムシンポジウム資料,, pp.307–312, .(2007)