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概略と背景

2009-05-18 (mon)|カテゴリー:

工学の歴史は現代社会に物質的豊かさもたらしてきました.

結果的に,多くの先進国では市民が充分な物質的豊かさを享受し,その飽和を肌で感じるようになっています.

その一方で,人と人工物が関わり合う現場では人工物が人から切り離された状態で持ちうる価値と,人を含んだ系において人工物が持ちうる価値の間に差が生まれてきているのでは無いでしょうか?その差分こそが,人間と人工物が共生する世界における固有の価値であると言えるでしょう.

人間の排除を理想とした航空機などの自動化設計や原子力発電所の安全設計はヒューマンエラー(人的過誤)を排除できずにいます.また,知能ロボットは観 客を閉め出した劇場空間では見事に振る舞うが街中に現われることは出来ず,発売されたペットロボットは決まりきった動作を繰り返し三日で飽きられてしまう 状況です.

人工物の機能・性能は多くの場合,ユーザや環境が平均的な状態であること,理想的な状態であること,あらかじめ想定された状態であることを仮定して設計されているのではないでしょうか?

しかし,現実世界は当然のように動的で時変的であり,系の主要な構成素たる人間は環境と不断の身体的,社会的相互作用を繰り返す中で適応・学習を通じて変化していくのです.

そして,ボトムアップに形成された秩序が再びトップダウンな制約として諸要素の行動を支配することになります.これは「創発 (emergence)」や「周縁制御 (marginal control)」という言葉と関係しています.

このような系を理解し,よりユーザに高い価値をもたらす人工物や制度を生み出す為に,そのような系のモデリングを通じた

「人を含んだ創発システムの構成論的理解と工学的応用」

を主眼に研究を行ってきた.

人を含んだ系では何よりも,人が適応的で自律的に変化する存在である点が最も重要です.その為,

  1. 人の知的適応性を理解する事で,その特性を前提とした人工物やシステムを生み出すため
  2. 人のような適応的な人工物を生み出すため。

の二つの問題意識を基礎としながら各種の手法,計算知能モデルを提案してきました.

 

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