0116 サイバーペット/生命情報論
千倉書房
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2008年の『L’tranger』
心の師匠の一人,西垣通先生の新作.
右から読むと小説で,左から読むと学術書?
まぁ,学術書の方は,小説の方の裏に潜む問題意識を書いている感じで,後書きっぽい.
ペットロボットの適応性構築を工学的には主たる研究課題にしている僕的には
サイバーペットのお話は関係点も多いがそれ以上に,情報化時代における生命倫理観において共感すべき点があった.
人間機械論という言葉は使い古された感があるが,生物研究というフィルターを通して,
現代ほど人間機械論が猛威をふるっている時代もなかろう.
生命を機械のように見ること自体は構わない.
あくまで「モデル」という色眼鏡を通して現象を切り取り記述することで先に進むのが科学というものである.「モノそのもの」
などホモシグニフィカンスの私たちのシンボリックな世界では扱い得ないわけで.
と,まあ,しかしながら,そのモデルを通した世の中の見方が,ついつい「当たり前の常識」として闊歩しだして,
「生命も機械として捉えることもできるよね~.」
が,いつの間にやら
「生命も機械だよねー」
に変わってしまって.それが,生命や人命を操作的に扱う事へと変わってしまう.
最近のサイエンスは「わかっていないことをさもわかっているふうに」扱う事がお好きだ.
ベタな言い方をすると,要素還元的な理解を得た時点でシステム的特性を無視して理解したツモリになる事が多い.それが,もともと
「よく細部が分からなくても工夫で何か出来るようになることが重要」として古来から発展してきたテクノロジーと手をとりあって,
アゲアゲ状態になっているのがちらほら.メディアと手を携えているのもあるか.
まぁ,別にまがい物がまかり通る世界は今に始まったことではなく,古来より社会的闘争の中で栄枯盛衰を繰り返しているので,
そのダイナミクスの中に身を浸しているだけデスガ.
とりあえず,一件あげるなら,本書の中でもとりあげられている
遺伝子をいじって,優秀な(?)子供を作るデザイナーズベイビー
は,倫理問題はさておいておいても,進化論的にも経済学的にもシステムバイオロジー的にも制御工学的にも,
あっちにもこっちにもどう考えてもヤヴァイ事だらけで,
「まー,目をつぶって,やろうとおもえるから,いっちょやってみっかー!」
って事でしか始められない気がするよね.ホント.
倫理の話になると人文系,世論,宗教,文化入り乱れて角が立ちやすいので,
理系的学問の世界で止められる学問の暴走は学問の世界で止めるべきだろうと思うのです.
21世紀は科学のイノベーションの時代ではなくて,現在まで技術や文明の到達地点に依拠しながら,もっと身近な,生き方や生命観,
道徳,消費社会のイノベーションの時代でなくてはならないなと思う今日この頃.エネルギー問題や環境問題,食糧問題,労働問題,
および学問の世界,官僚・政治における縦割りの問題などを見ていてそんな気がします.
小説へのつっこみとしては
学歴もあまりなく,就職できない,しがないフリーター(主人公)が,なんでこんなに学問的知識が豊富で頭いいんだよっ!!?
て,ところでしょうか?主人公の言葉や考えのハシバシに西垣通が見えかくれします.



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